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なぜ地方公務員はHOLGに「もやもや」を感じてしまうのか?

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【この記事で分かること】

  • HOLGとはいったい何なのか
  • HOLGのすごいところはどこなのか
  • なぜHOLGに「もやもや」を感じてしまうのか
  • HOLGが「怪しい」「うさんくさい」というのは真実か

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

地方公務員向けメディアとして知られている「HOLG」。

数多くの地方公務員の活躍が、華々しく描かれており、地方自治や地方公務員業界に、大きな影響力を持っています。

私も定期的にHOLGのサイトやSNSなどを拝見し、さまざまな分野で活躍する地方公務員の様子に勇気をもらっているところです。

しかし、一方で…

この「HOLG」や、ここに登場する地方公務員に、言語化しづらい「もやもや感」を持っている…

という話は、正直なところ、かなりいろいろなところで耳にします。

本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、なぜ多くの地方公務員が「HOLG」にもやもや感を抱くのかについて、考察しようと思います!

まゆ
まゆ
今回の記事テーマは、X(旧Twitter)のアンケートで、リクエスト1位になったものです!
たかし
たかし
なお、今回の記事は、何か・誰かを批判したりするものではなく、「HOLGにもやもやを感じる人がいる」という現象それ自体を論じるものですので、あらかじめお含み置きください。

HOLGとは

まず、そもそも「HOLG」とは何なのか。

HOLGは、「Heroes of Local Government」の頭文字をとった名称で、地方公務員や地方自治体を応援するメディアです。

主なコンテンツとして…

  • 地方公務員オンラインサロン
  • 地方公務員を応援するメディア
  • 地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード

があり、これらをウェブサイトやSNS、YouTubeなどを駆使して発信しています。

これらの運営は、2016年に設立された「株式会社ホルグ」が行っています。

HOLGのすごいところ

さて、まずはこのHOLGのすごいところ、見ていきましょう。

非常に見せ方がうまい

このHOLGは、2016年の会社設立以降、2023年現在に至るまで、全国各地で活躍するさまざまな公務員の取組を、非常に分かりやすく発信しています。

その見せ方は、非常に美しくキャッチー

情報発信スキルの高さに関しては地方公務員界隈では圧倒的に群を抜いており、何なら他の業界も含めてもトップクラスにあるといえるでしょう。

ウェブサイトの作り方、SNSの運営のしかた、動画の編集スキル、同志の巻き込み方などなど…

こういったスキル、多くの地方公務員にとっては苦手とするところであり、そういった点からして、まずHOLGに学ぶべきところは多いと思います。

さまざまな政策分野における活躍者を紹介

地方自治体、地方公務員は、どうしても扱う政策分野が多岐にわたります。

そのため、当サイトも含め、どうしても扱う政策分野の得意・苦手というものがでてきてしまいます。

まゆ
まゆ
ちなみに私は企画や部局総務課の経験があるので割と幅広い分野を語れるつもりですが、それでも財政、地域振興、地域保健あたりの得意分野に話題が集中しがちかも…

ところが、このHOLGは、政策分野を問わず、幅広い分野で活躍する地方公務員を紹介できており、どの分野を主戦場にする公務員であっても、一定の共感を得ながら見ることができます。

ちなみに、HOLGでは過去の「地方公務員アワード」歴代受賞者の部署を分析しているのですが、

  • 保険福祉
  • 商工観光
  • 広報/シティプロモーション
  • 政策企画
  • 移住定住推進
  • 教育関連
  • 都市計画

といったところが受賞者数の上位になっているとのこと。

企画系から福祉系、さらには事業系まで、幅広いジャンルから複数の受賞者が生まれていることがわかります。

なぜHOLGにもやもや感を覚えてしまうのか

さて、このように、地方公務員のさまざまな取組を、分かりやすく発信することで、地方公務員の活躍を応援してくれているHOLGですが…

このHOLG、実際に働いている地方公務員に「どう思う?」と話を振っててもと、どうもあまりポジティブな反応が返ってきません

しかし、「どのあたりがイマイチなの?」と話を深掘りしても、あまり的を射た答えが返ってくることもなく、

「なんとなく、なんかヤダ」

みたいな反応をされることが多いです。

どうやら、

多くの地方公務員は、このHOLGについて、何とも言語化しにくい「もやもや感」のようなものを抱いている

ように思います。

では、なぜ多くの地方公務員が、HOLGにもやもや感を覚えてしまうのか…少し考察してみました。

【理由①】紹介された取組が「点」にとどまっている

HOLGで紹介される取組は、いずれも、前向きに職務に取り組む地方公務員が、大きな成果を上げたものばかりです。

デジタル技術を活用した業務の効率化、地域コミュニティの活性化、地域の商業・産業の振興…

1つ1つの取組は、本当に素晴らしいものだと思うのですが…

一方で、地方自治体の仕事は、地方自治法の規定を引用すれば…

住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う

ことです。

ここでは「総合的に実施」というところがキーワードです。

一方、HOLGで紹介される取組を見ていると、1つ1つのエピソードが、個別の政策課題を解決するという「点」にとどまっており、その「点」が、当該取組が行われた自治体のまちづくりにおいて、どのように機能しているかが、全く分からないのです。

もちろん、個別の優れた取組を紹介することも非常に大事なことであり、その取組に大きく貢献した職員を顕彰することも、モチベーション維持・向上のために有用であるとは思うのですが…

HOLGの紹介の仕方が、どうしても「職員個人」の「個別の取組」に強くフォーカスを当てすぎているがゆえに、

で、その取組によって、まちはどう変わったの?
自治体行政全般において、何がどうなったの?

というところが見えない…

すなわち、個別の「点」を散発的に紹介しているだけであるがゆえに、「大きな政策課題の解決」や「まちづくり全般」という「線」「面」で政策を語ることができないようなアプローチになっているのです。

これはすなわち、地方自治法的な言い方をすれば、行政の「総合的な実施」が見えないという話でもあると言えるでしょう。

【理由②】職員が悪目立ちする

このHOLGは、「Heroes of Local Government」、日本語に訳せば「地方自治体のヒーローたち」という意味になっています。

従って、先ほどの項目とも重複しますが、紹介のメインに置かれるのは「自治体」の「まちづくり」ではなく、「個別の取組を実施」している「職員個人」です。

従って、どうしても職員個人が全面に出てくるような情報発信がなされるわけですが、

この「職員個人が全面に出る」ということに、強い違和感を持つ人、非常に多い

です。

言うまでもなく、地方自治体の仕事は、職員ひとりで出来るものではなく、部署内の同僚や、関係部署との連携によってはじめて成り立つ、チームプレイが中心です。

そしてそれは、「地方公務員アワード」において紹介されているような取組も同様です。

にもかかわらず、HOLGの情報発信では、まるで個別の取組が、1人の職員のみによって達成されたかのような見せ方がなされています。

そのため、チームプレイで仕事をすることに慣れている地方公務員は、HOLGの情報を見るたびに、

こんな取組、一人でできるわけないのに、なんで一人の手柄みたいになって、どや顔でメディアに出てるの?

みたいに感じてしまうのです。

なお、固有名詞は伏せますが、私は、何年か前の仕事で、地方公務員アワードで表彰されたとある職員さんが勤務する自治体とのお付き合いがありました。

その自治体の別の職員さんに、「貴自治体には、地方公務員アワードで表彰された○○さんがいらっしゃいますよね」と話を振ったところ、

ああ、○○さんは、組織としてやらないといけない仕事の優先順位を無視して、目立つ仕事ばかりしてるから、実は「承認欲求の塊」と揶揄されてて、内部での評判はめちゃくちゃ悪いんですよ…

と、眉をひそめながら答えられたのを、よく覚えています。

たかし
たかし
うわ、そのパターン、別の公務員系コミュニティでも経験したことがあります…

【理由③】「嫌われる仕事」「嫌な仕事」は出てこない

先ほど、HOLGでは、さまざまな政策分野が幅広く紹介される…というような話をしましたが、実はHOLGの「地方公務員アワード」に全く出てきていない政策分野があります。

それが…

  • 財政
  • ファシリティマネジメント
  • 例規審査
  • 首長部局側の議会総括担当
  • 監査

です。

各課が必要として要求してきた予算に対して、歳入歳出予算を均衡させるために、厳しいことを言いながら減額し、原課や部局総務課から悪口を叩かれる財政課

人口減少に伴って、多くの公共施設を廃止したり統合したりしないといけない中、住民からの強い反発と対峙して、これを乗り越えなければいけないファシリティマネジメントの担当部署

条例や規則の案などを形式的にチェックしつつ、他の法令や例規等との矛盾がないかをチェックするという、非常に細かくて地味だけど、大事な仕事を担う例規審査の部署

議案審査のほか、首長が提案した議案がスムーズに議会で議決されるよう、議会との連絡調整役を担い、水面下で議会の各会派と政策議論や根回しを行う、首長部局側の議会総括の部署

首長部局等の事務執行や財務状況等を監査して、自治体職員に厳しいことを言わないといけない監査委員事務局

これらは、いずれも「自治体運営において必要不可欠」な仕事ではありますが、一方で多くの地方自治体職員にとって「嫌われる仕事」であったり「嫌な仕事」であったりします。

こういった「必須だけど嫌な仕事」を担う職員にスポットライトが当たっていないことも、自治体職員としては違和感を感じるところでしょう。

まゆ
まゆ
なお、アワードには出てきませんが、HOLGページの「事例を知る」コーナーには、財政や議会についての言及があります。
とはいえ、さすがに議案根回しの様子とか、一般質問の答弁調整の話とか、生々しい職員と議員のせめぎ合いまでは描かれてませんね…
たかし
たかし

【理由④】「困難な政策課題」が議論に上らない

HOLGでは、基本的には、地方公務員以外も含めて、多くの人々が共感できるような、分かりやすい政策テーマが取り上げられることが多いです。

一方で、地方自治体の職員の中には、分かりにくくて困難な政策課題について、専門的な知識や経験を活かしながら、必死に考えて取組を進めている者も数多くいます。

たとえば、2023年の年末時点で言うと、岸田総理が掲げる「定額減税」が大きな政策議論を呼んでいます。

この定額減税については、

  • 定額減税における財源はどうするのか(R6向け地財対策で一定整理済み)
  • 減税の恩恵を受けられない人への給付金はどう制度設計するのか
  • 課税と非課税の端境にいる人はどうするのか
  • 税と給付金を一体的に対応するシステム構築は困難を極めるが、同時進行で自治体システム標準化が進められている中、どうしたらいいのか

といった、非常に大きな政策課題があり、各地方自治体の企画、財政、人事、税務、福祉、情報システム部門が連携して、必死になって対応を考えています。

今回の「定額減税への対応」はあくまで一例ではありますが、こういった、地方自治体が直面する「困難な政策課題」について、HOLGの中で具体的に語られることは、ほとんどありません

こういった「自治体が本当に頭を悩ましている、困難な政策課題」を語ることのないままに、表層的なわかりやすい取組だけを取り上げてしまっていることも、多くの地方公務員にとってHOLGを受け入れにくくしてしまっているように思います。

まゆ
まゆ
逆に言うと、具体的な政策課題に対して、実務を押さえた骨太な提言をできるようになると、HOLGの価値はだいぶ上がると思います!

【理由⑤】オンラインサロンへの嫌悪感

HOLGは、オンラインサロンを運営しています。

そのコンセプトは、次のとおりです。

学びと人脈が自宅で手に入る。地方公務員のオンラインサロン、はじまりました。地方公務員として仕事をするうえで、多くの悩みがあると思います。そんな皆さんの知識と元気を充電できるように、『費用』『時間』『場所』の壁を越え、ゆるーく交流できる場を作りました。本業へ真摯に向き合っている方が多く参加しています。

※CAMPFIRE「地方公務員オンラインサロン by HOLG」より

そして、このオンラインサロンの会費は、月1,800円

本稿執筆の2023年12月29日時点において、会員数は329人ですので、単純計算で月592,200円、年7,106,400円がオンラインサロンの収入となっています。

しかしながら、このオンラインサロンというのは、一般論として

  • 主催者=教祖、参加者=信者という、宗教のような関係性
  • 「養分」と称される会費の搾取
  • 主催者の主張を「正しい」と思うしかない空気感
  • 参加者の異様な熱狂感

などから、「まるで新興宗教のようなうさんくささ」を持っていると言われています。

もちろん、すべてのオンラインサロンがそうであるとは限りませんし、HOLGのオンラインサロンもまた同様に上記に該当するというわけではないのですが…

一般論として「オンラインサロン=うさんくさい」という嫌悪感があるのは事実です。

そして、HOLGがオンラインサロンを運営してしまっており、決して安くない会費を取っていることもあって、HOLG自体にどことなく「もやもや」感を覚えている人は、その「もやもや」がオンラインサロンのせいで増幅されている、ということが言えるのではないでしょうか。

「地方自治体にヒーローは要らない」論

ところで、これは私自身の考え方でしかないのですが、私は、

地方自治体に「ヒーロー」は要らない

という立場をとっています。

途中にも申し上げましたように、地方自治体の仕事は多岐にわたっており、また組織も大きいので、一つの政策課題を、一人で解決することはできません

何か一つの取組をするにせよ、その裏には、

  • 取組を理解し、応援し、協力してくれる上司・部下・同僚
  • 取組に必要な予算の措置をしてくれる部局総務課や財政課
  • 取組に必要な人員や体制の配備をしてくれる人事課や定員管理担当課
  • 取組に必要な予算を議決してくれる議会

などのように、数多くの人の理解と協力が存在しています。

そう、自治体の取組は、チームプレイによって成り立っているものなのです。

ましてや、昨今の政策課題はどんどん複雑多様化しており、職員ひとりどころか、部署1つ単位で解決できることさえ稀になってきています。

さまざまな部署の、さまざまな政策を有機的に連携させないと、今の時代、政策課題は解決しないのです。

もちろん、取組の中核となるキーパーソンがいることは否定しません。

ただ、そのキーパーソンを「ヒーロー」と崇めたてるがゆえに、チームの他のメンバーの存在がなかったことになるようであれば…

そんなことになるのなら、地方自治体にヒーローなど要りません

あえていうなら、紹介された取組にかかわる、すべての人がヒーローですし、もっといえば、スポットライトに当たることなく、日々真摯に、そして実直に仕事をこなしているすべての職員が、地方自治体にとってのヒーローなのです。

一部の目立つ職員を「ヒーロー」として取り上げることにより、結果として「ヒーローでない」とされた職員との分断やあつれきが生じることは、絶対に避けなければならないと、私は考えています。

まゆ
まゆ
「ヒーローでない」とされている職員も、実際は目立たないところで地方自治を支える、大事なスタッフですからね。

まとめ

以上、本日は、HOLGについて、言語化しづらい「もやもや感」を感じる公務員が多い…という課題意識のもと、なぜHOLGにもやもや感を覚えるのかについて、考察いたしました。

HOLGというメディアは、全国のさまざまな自治体の、さまざまな前向きな取組が紹介されており、読み物として、非常に興味深く読めますし、またさまざまな学びや気づきも得られます。

一方で、その取り上げ方が「職員個人」の「個別具体の取組」を輝かせるように、強いスポットライトを当てすぎてしまっているがゆえに、

  • 個別の取組が、まちづくり全体にどうつながるのかが見えない
  • 個別の職員が悪目立ちしてしまっている
  • 「自治体運営には大事だけど、嫌な役回りの仕事」は注目されない
  • 解決困難な政策課題は注目されない

といった、「スポットライトの影」も強く出てしまっているように感じますし、その影の部分は、「オンラインサロン」という、一般にうさんくささを感じるものがセットで運営されていることにより、なお濃くなっているようにも思います。

そもそも私は、チームで仕事をする地方自治体において「ヒーロー」を作り出すことは否定的な立場です。

とはいえ、HOLGのコンテンツ自体は非常に良質で学びも多く、HOLGを全否定するような立場でもありません。

地方公務員の仕事の仕方、仕事のPRの仕方、仕事の顕彰の仕方についてはさまざまな手法がありますが、どのような形を選んでも、そこに賛否両論はつきものです。

HOLGの取組でモチベーションが上がると感じる人がいる一方、HOLGの取組に「もやもや」を感じる人もいる

今回は、「あまり言語化されていない」という点に着目し、あえて後者の視点を中心に論じましたが、どちらかの立場で一方的に相手を攻撃的に批判するのではなく、それぞれの立場の人が、お互いをどういう思いで、どういう考え方で見ているか…

こういったところを、相互理解することで、地方公務員の働き方、モチベーションの上げ方に関する議論も、深まっていくのではないでしょうか。

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