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人事と定員管理、組織は一体にすべき?分離すべき?

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【この記事で分かること】

  • 人事部門と定員管理部門を組織上どのように整理するか
  • 人事部門と定員管理部門を一体化するメリット・デメリット
  • 人事部門と定員管理部門を分離するメリット・デメリット

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

自治体の組織改正においては、さまざまな論点がありますが…

「人事部門」と「定員管理部門」を一体化するか、あるいは分割するか

というのも、「企画と財政を分離するかどうか」と同様に、よく議論に上るテーマでもあります。

そこで、本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、「人事」部門と「定員管理」部門を一体化するか、あるいは分割するかについて、考えてみようと思います!

人事部門の業務

一般的に、人事部門は、次に掲げるような業務を所管します。

職員の人事異動・昇任管理

人事課といえば、真っ先に思いつくのが、この人事異動関係作業。

小さな自治体であれば人事課が全体の絵を描きますが、ある程度大きな自治体であれば、人事課は部局単位の調整を中心にし、課単位での人事配置は部局総務課が人事課と調整しながら行う、というのが定番です。

また、人事配置と合わせて、職員の昇任についても人事課が判断して行います。

昇任するにふさわしい職員を、どのタイミングで昇任させ、どこへ配置するか…。このあたりも、人事課の腕の見せ所です。

職員の研修

また、人事課の業務として多くの人が思い浮かべるのが、職員研修

新規採用職員に対して行う研修、職員の等級別に実施していく階層別研修、年齢ごとに実施していく研修など、さまざまな研修を実施していきます。

また、最近は新たな行政課題が発生したりしたときに、この行政課題に対応できるような研修を、人事課主導で行う事例も多々見られます。

最近であれば、LGBTQに関する研修であったり、あるいはデジタル化・DXに関する研修などが、新たな行政課題に対応するための研修して行われたりします。

なお、個別の行政課題に対応する研修については、各部局が主催して行い、人事課が共催する…という手法がとられることもあるようです。

まゆ
まゆ
たとえば、滞納整理研修とかであれば、税務部門が中心になって行ったりしますよね。

職員の懲戒・分限処分

また、これはあまり良い仕事ではありませんが、不祥事や事務処理ミスなどが発覚した際に、職員に対して懲戒処分を行うことがありますが、これも人事課の仕事です。

事案が発生すると、当該事案の所属部署の管理職と人事課、部局総務課などが連携して全容を明らかにし、懲戒処分に関する規定や、過去の事案などを参照しながら、懲戒処分の内容を決めていきます。

人事委員会を設置しない自治体では職員採用も

なお、職員の任用に関することについては、人事委員会が設置されている自治体はそこが行いますが、人事委員会が設置されていない自治体の場合は、首長部局において人事課が担当します。

たかし
たかし
都道府県・指定都市は人事委員会が必置で、人口15万人以上の自治体は人事委員会か公平委員会のいずれかを設置…これが基本ですね。

職員採用試験を行い、職員を採用する…こういった仕事も、人事課の大きな仕事の1つです。

人事課は意外とネガティブな仕事が多い中、この職員採用業務は比較的前向きな仕事で、割と人事課職員の中では人気があるという話も聞きます。

定員管理部門の業務

続いて、定員管理部門では、次に掲げるような業務を所管します。

定員管理・定員調整

定員管理部門の業務といえば、やはりこの「定員管理・定員調整」が一丁目一番地になります。

各部局・各課の業務量に見合った職員の定員数を査定し、必要に応じて増員または減員する…。

一昔前の、いわゆる「集中改革プラン」フェーズでは、とにかく職員数を減らすことが求められていましたので、この定員管理部門が定員査定権を行使して各部局・各課の職員数を減らしていき、「財政課以上に評判の悪い課」として悪評を得るに至りました。

一方で、最近は「人減らし」のブームは去りましたが、新たな行政課題が発生したり、国から新たな業務が降って湧いたりして、業務総量が増加傾向にあり、定員を増やさないといけないにもかかわらず、集中改革プラン時に職員を減らしてしまった弊害で人手不足に陥り、定員を増やせるだけの実人員がいないという状況にあります。

まゆ
まゆ
このあたり、別記事でしっかり書きたいと思います。

組織管理・組織改正

また、定員管理部門は、各部局・各課の定員を、どのような「箱」に入れるかという、組織管理の仕事も担当しています。

特に、新しい行政課題に対応するための組織を設置したり、逆にその役割を終えた組織を廃止したりといった、組織改正業務も、定員管理と合わせて重要な業務になってきます。

組織を改廃することは、その自治体にとってどのような業務を重んじているかを対外的に強く打ち出すメッセージとしても機能するため、予算と並んで注目を集めやすい業務だと言えるでしょう。

コンプライアンス・内部統制・外部監査等

このほか、昨今よく話題になるコンプライアンスや内部統制といった、組織マネジメントに関連する業務についても、定員管理部局が担当するパターンが比較的多いようです。

この背景には、定員管理や組織管理といった業務と、こういった組織マネジメントに関する業務については比較的親和性が高い、といったところがあるのではないかと推測されます。

なお、外部監査についても、この定員管理部門で所管するパターンが一定程度見受けられます。

たかし
たかし
自治体の中には、外部監査に関する事務を監査委員事務局が担当している場合がありますが、外部監査は本来的には首長部局が窓口になるべき仕事だと思います。

人事と定員管理を一体化すると…

さて、こういった人事部門と定員管理部門については、同じ部局内に置くパターンと、別部局に分けるパターンと、いくつかのパターンがあります。

まずは人事部門と定員管理部門を一体化する場合について検討してみましょう。

人事と定員管理を一体化すると、

人事を見ながら定員管理・組織管理を、そして定員・組織を見ながら人事異動を行える

ようになります。

ですので、たとえば新しい行政課題に対応する組織を作ろうとしたときに、その組織にどういった事務分掌をかぶせるかを検討することになりますが…

こういうときに、人事と定員管理部門が連携していると、

この人がここの課長になるから、こういう事務分掌をもった組織にできるな

とか、

この組織は、こういう専門性を持った係長が必要になるから、この組織を作るなら、あの係長を嵌めてもらうよう、人事に進言しないとね

とか、こういった

具体的な人の顔を見ながらの定員管理・組織改正

ができるようになります。

これにより、新たに設置された組織では、そこに適した人材が配置され、新たな行政課題に迅速に対応できるようになるのです。

人事と定員管理を分離すると…

一方、逆に人事と定員管理を分離すると、どうなるか。

先ほど述べたような、「人の顔を見ながらの定員管理・組織改正」は、確かにできなくなりますが…

一方で、そもそも役所というのは、一定の周期で人事異動が発生することが前提となっています。

ですので、

「人の顔を見ながらの定員管理・組織改正」をしてしまうと、組織の業務が属人化し、短期的には成果が出るものの、長期的には人事異動が困難になってしまう

という弊害をも、同時に発生させてしまいます。

本来役所の組織というのは「誰が担当しても、一定の成果が出るように、マネジメントを行う」というのがセオリーです。

ですので、本来的には

  1. まずは定員管理部門が、もっぱら理屈で定員査定・業務整理・組織改正を行う
  2. その上で、人事課や部局総務課が、その理屈を参照しながら人事配置を行う

というふうにあるべきですし、こうすることによって、先ほど述べたような「人事と定員管理を一本化する弊害」をクリアすることができます。

基本的には一体化が望ましい…が、正解はない

さて、これら2つを比較考量した上で、人事と定員管理は、一本化と分離、どちらが正しいのか。

思うに、これらについては、自治体の規模によって判断が異なるものと考えられます。

というのも、小規模な自治体であれば、職員一人一人の顔が相対的に見えやすいことから、「人事と定員管理は一本化して、機動的な行政運営を行う」ということが行いやすくなります。

一方、大規模な自治体であればあるほど、職員一人一人の顔を見ながら組織をマネジメントすることに合理性はなく、「どのような職員が配置されても、一定程度仕事が回るような組織体制」を構築することに主眼を置かないと、大規模組織を持続可能なものにすることができません。

こうしたことから、

  1. 基本的には人事部門と定員管理部門については、小〜中規模自治体ではには一本化…それもできるだけ近い組織に置いておくことが望ましい
  2. 一方、大規模な自治体であれば、人事部門と定員管理部門を離しておく選択肢もあり得る

と考えています。

ちなみに、人事管理部門と定員管理部門を離して設置する場合の定番は、企画系の部局の行政改革担当課に設置されるパターンが多いです。

先ほども少し出てきましたように、行政改革において定員削減・組織のスリム化は非常に重要なファクターになります。

なので、行政改革部門において定員管理・組織改正を行うということには、一定の合理性が見て取れるということなのでしょう。

まとめ

以上、本日は、人事部門と定員管理部門について、一体的な組織とするのが良いのか、あるいは分離するのが良いのかについて、検討を行ってみました。

人事部門と定員管理部門は、どちらも役所のヒューマンリソースを管理する、非常に重要なセクションになりますが…

  • 人の顔を見て人事配置を考える人事部門
  • 事務分掌・業務総量・組織マネジメントなどの「理屈」で考える定員管理部門

と、その考え方のベースとなるところは、実は結構違います。

なので、これらを近づけることによるシナジー効果も見込める一方、業務や組織を属人的にしないため、あえて「離す」ことにより、ドライな組織運営に徹するといいうやり方もあり得るところです。

これら両者は、どちらが良いのか…正解はなかなか見出しにくいところですが、この2つの組織文化・考え方の違いというのをしっかり理解しておくことが、この手の議論においては、とても大事だと言えるでしょう。

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