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地方自治体の人手不足事情…どうする?どの分野が顕著?

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【この記事で分かること】

  • 地方自治体の人手不足事情
  • 地方自治体では、どのような職種で人手不足が生じているのか
  • 教員、保育士のほかにも人手不足の職種はあるのか

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

全国的に、そしてさまざまな業界で話題になっている、人手不足問題。

仕事はどんどん増えていってるのに、その担い手が不足しており、仕事が回らなくなっている現象です。

この人手不足は、官・公・民を問わず、さまざまな業界で起こっており、地方自治業界も例外ではありません。

本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、地方自治業界で特に人手不足が顕著な職種・部署等について、いくつかお話ししようと思います!

標準化とDXで超多忙…情報システム担当者

今、自治体の情報システム担当部局は、圧倒的な人手不足感に悩まされています。

その背景に挙げられるのが、自治体情報システム標準化への対応と、デジタル化・DXの推進ムード。

自治体情報システムの標準化とは、自治体が使用する情報システムに対して一定の基準や規格を設け、統一的な取り扱いを促進することを指します。

住民基本台帳など、地方自治体が標準的な事務を処理するためのシステムは、事務処理の大半が法令で定められておりますが、各自治体は独自にシステムのカスタマイズを行っており、非効率になっているという課題がありました。

そこで、国のデジタル庁が音頭をとり、自治体情報システムの標準化を進めようとしているわけですが、これが

「令和7年度までに」

という期限を国において定められてしまったことにより、全国約1,700の地方公共団体が、「一斉に」この業務に取り組まざるを得なくなりました。

限られた期間の中で、システムに関する高度な事務を担うことになりますので、自治体にもシステムに長けた職員が必要になりますが、多くの自治体はこの手の事務をアウトソーシングしてしまっており、ベンダーと対等にわたりあえる職員はそれほど多くありません。

加えて、民間サイドであるベンダー側も短期間の間に業務が集中するため人手不足に陥っており、役所のシステム担当者を好待遇でスカウトしている事例も、いくつかの自治体で見聞きします。

システム標準化は、これだけで別記事が数本書けるほど深いテーマですが、「自治体人手不足問題」という切り口でみても、十分話題性の高いトピックスなのです。

ブラック労働が知れてなり手不足…教員

学校の先生…教員の人手不足問題は、一般ニュースで取り上げられることも多く、比較的よく知られたトピックスです。

教員は、労働時間が長いにもかかわらず固定残業制で労働に見合った対価が得られないこと、部活動などといった実質ボランティアのような業務があること、モンスターペアレントへの対応といった困難な業務が伴うこと…

など、さまざまなネガティブ要素が広く知られ、

「教員=ブラック」

というイメージはすっかり定着し、若者が就職先として敬遠するようになってきています。

文部科学省は、この状況に課題意識を持っているものの、問題を抜本的に改善する取組を仕掛けることもできず、そうこうしている間に教員の人手不足は進行する一方です。

待機児童解消のためにも…保育士

都市部を中心に、大きな問題となっているのが、保育所の待機児童問題

日本の人口の状況を見ると、少子高齢化が進んでいるはずなのですが、最近は夫婦共働きがスタンダード化しており、これに伴って保育所のニーズは明らかに上がってきています。

一方、その保育所において、子どもたちの対応をしてくれる保育士は全体的に不足しており、限られた保育士を、保育所同士で、あるいは公立保育所だと自治体同士で取り合いしているのが現状です。

保育士を自分のところの自治体に確保するために、就職祝い金を出すなど、各自治体がさまざまな施策に取り組んでいるところではありますが、そもそも絶対数が増えない中での奪い合いは、自治体間を消耗させるだけ

資格所有者であるものの保育の職についていない、いわゆる「潜在保育士」を、いかに保育現場に戻すかも自治体の腕の見せ所ですが…どこもなかなか上手くいっておらず、どこの自治体も、保育士確保には苦心しているのが現状です。

このままではバス交通が維持できない…バス運転士

最近、「バスの路線見直し」「バスの運休」といった話題を、さまざまな地域で見聞きするようになりました。

たとえば、大阪府の南部地域で路線バス事業を営んできた「金剛バス」は、令和5年12月をもって、すべてのバス路線を廃止し、バス事業から撤退するという判断を行いました。

大阪部南部は、一定の交通需要が見込めるエリアであるにもかかわらず、なぜ撤退…となったのですが、その主な理由は経営悪化ではなく、なんと「人手不足」でした。

また、長野市で路線バスを運行する長電バスは、令和6年1月21日から、日曜日を運休するという判断を行いました。

この理由もまた、一言で言えば「運転士不足」です。通勤・通学等にもっとも影響の少ない日曜日を運休することで、業務量を減らすという手法で、長電バスは人手不足に対応しようとしているのです。

このほか、表面化していないだけで、公営・民営を問わず、どこのバス会社も人手不足に陥って、こっそりと運行本数を減らしたり、一部路線を運休したりして対応していたりするのが現状です。

なお、バス業界については、かつて公営企業として運営されていた各地の市営バス事業において、「運転士の給料が高すぎる」とやり玉に挙げられてしまったことで、民間バス事業者も含めて人件費水準の抑制が進み、業務に見合った待遇が得られなくなった、との指摘もあります。

就職先が多く、人材の流動性が高い…保健師

令和2年度、新型コロナウイルス感染症への対応において、一気にその注目度が高まった保健師

コロナ禍においては、積極的疫学調査から感染者への対応まで、保健所設置自治体に勤める保健師の皆さんの奮闘により、新型コロナ対策が実施されてきました。

しかし、この保健師、コロナ禍の間は、平日は深夜まで勤務、さらには土日もなしという、圧倒的な激務を余儀なくされておりました。

加えて、コロナ禍以前の平時においては、人事・定員管理担当課や部局総務課も、大規模感染症を想定した保健師の重要性を十分に認識していなかったため、どこの自治体でも非常時をそう十分な保健師が確保されておらず、加えて女性が多いという職種の特性上、産休・育休が発生しやすく、人事配置において欠員が生じがち。

そのため、コロナ禍においては、在籍している保健師たちが、使命感だけで必死に激務に耐えていたものの、どこかで燃え尽きてしまって、そのまま退職に至る…という事例が全国の保健所で続出していました。

特に、保健師は資格職であり、看護師資格を有していることも相まって、新たな就職先に困らない…すなわち人材の流動性が非常に高い職種であることから、職場に不満を抱えると、すぐに転職してしまう傾向があります。

新型コロナは落ち着きましたが、次にいつまた、大規模感染症が日本を襲うか分かりません。

そのときに備えて、感染症対策の中心となる保健師が安心して働ける職場環境を、平時のうちから作っておくことは、平時の母子保健や公衆衛生において人手不足とならないためにも、重要なことだと言えるでしょう。

まとめ

以上、本日は、全国的・全業種的に問題となっている「人手不足」問題について、地方自治業界において、特に影響を感じる職種について、まとめてみました。

今回、情報システム担当者、教員、保育士、バス運転士、保健師という5つの職種について、人手不足が生じている現状とその背景について考察してみましたが、これらに共通するのは、「専門性の高い職種である」ということ。

そして、情報システム担当者を除く職種においては、「資格が必要」であるという点も見逃せません。

専門性が高いということは、人材の育成に時間がかかるということ。

また、資格が必要な仕事については、「資格さえあれば、特定の職場にとらわれず、好きなところで働ける」という面があり、人材の流動性が非常に高まる一面が見えてきます。

人手不足を解決するためには、

  • 担い手そのものを増やすこと(マクロの視点)
  • 人材を自らの組織に囲い込むこと(ミクロの視点)

という、2つの視点があります。

専門性が高く、かつ社会的な必要性の高い職種に就く人を増やすために、賃上げや労働条件の改善といった処遇の改善を。

そして、そういった職種の人を抱えている組織は、貴重な人材が外部流出しないように、最大限の待遇改善を行って、今頑張っている人たちに報いる取組を。

なお、こういった人手不足問題に対応するためには、賃上げにせよ労働環境の改善にせよ、一定の財政的な判断も必要になってくると考えられます。

これらの投資については、短期的な成果が見出し難い上、その規模も多額になると見込まれることから、国の財務省、そして自治体の財政部局は難色を示しそうですが、ここをケチケチすると、日本という国は少しずつ、でも確実に活力を失ってしまいます。

こういった、マクロの視点とミクロの視点の両方を持ち、必要であれば思い切った投資をする勇気も持ちながら、オールジャパンで、人手不足に対応していくことが必要なのではないでしょうか。

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