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佐賀県の「島耕作副知事」、議会で指摘!地方自治法違反なの?

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【この記事で分かること】

  • 佐賀県「島耕作副知事」問題の概要
  • 「島耕作副知事」がなぜ議会に指摘されたのか
  • 「島耕作副知事」は地方自治法違反なのか

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

ネットニュースやSNSで佐賀県の「島耕作副知事問題」が大きな話題になっています。

島耕作を副知事にしたことについて、佐賀県議会の議員が反発して問題になっている

ざっくりいうとこういう話なのですが、少し背景は難しくて、中身を正確に理解しようと思ったら、しっかりとした解説が必要になります。

そこで本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、佐賀県の「島耕作副知事」問題について、解説しようと思います!

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「島耕作副知事」に議会が反発?

2024年3月15日、ネットニュースで大きく話題になった事案がありました。

「島耕作の佐賀県副知事就任は『議会の同意を得ていない』県議が問いただす」

見出しだけで相当のインパクトがある事案ですが、ざっくりいうと、こういう話です。

  • 佐賀県が情報発信プロジェクト「サガプライズ!」の一環で、県が島耕作に副知事就任を依頼した、との設定
  • 県は令和5年11月から「島副知事執務室」というスペースを作り、一般に公開
  • ところがこれに自民党の木原県議会議員が「議会の同意を得ずに島耕作を副知事に任命しているのは地方自治法違反ではないか」と指摘

議会が「島耕作副知事」は地方自治法違反と指摘

地方自治制度のことを知らない多くの人が素朴に思うのが

「これが地方自治法違反って、どういうこと?」

というところだと思います。

ここで、地方自治法の条文を見てみましょう。

地方自治法(抄)

第百六十一条 都道府県に副知事を、市町村に副市町村長を置く。ただし、条例で置かないことができる。
2 副知事及び副市町村長の定数は、条例で定める。
第百六十二条 副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長が議会の同意を得てこれを選任する。

そう、地方自治法第162条の規定により、副知事の選任については、議会の同意が必要なのです。

今回の木原県議会議員の指摘は、この「議会の同意を得てこれを選任」というプロセスを行っていない、というものなのですね。

「島耕作副知事」は地方自治法違反なのか

でも、そもそも「島耕作副知事」は、地方自治法に定める副知事だと言えるのでしょうか。

この点、木原県議の指摘を受けた佐賀県の事務方は、

「あくまで情報発信のプロモーション企画にすぎない」
「地方自治法第162条が適用される副知事ではない」

という答弁を行って、木原県議会議員の指摘に反論しています。

そりゃあそうですよね。

マンガのキャラクターを副知事に就任なんて、警察署の「一日署長」と同じで、基本的には単なる「お飾りの呼称」でしかなく、実際の役職者と同等の権限などが与えられるわけがありません。

ましてや、島耕作なんて、架空の人物です。

「いったい、何を言っているんだろう…」

というのが、地方自治関係者の率直な感想なのではないでしょうか。

ただ、その上で、あえてこの点に理屈を補強するなら、どんなことが言えるでしょうか。

【論点①】地方自治法が定める副知事の職務

地方自治法は、副知事の職務を規定しています。

地方自治法(抄)
第百六十七条 副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長を補佐し、普通地方公共団体の長の命を受け政策及び企画をつかさどり、その補助機関である職員の担任する事務を監督し、別に定めるところにより、普通地方公共団体の長の職務を代理する。
2 前項に定めるもののほか、副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長の権限に属する事務の一部について、第百五十三条第一項の規定により委任を受け、その事務を執行する。
3 前項の場合においては、普通地方公共団体の長は、直ちに、その旨を告示しなければならない。

このように、副知事の職務が書かれていますが、マンガのキャラクターにすぎない島耕作が

  • 政策及び企画をつかさどる
  • 職員の担任する事務を監督する
  • 普通地方公共団体の長(ここでは佐賀県知事)の職を代理する

などといった、地方自治法が規定する副知事の職務をできるわけがありません。

こうしたことから、島耕作副知事は、地方自治法が定める副知事だとは言えないのです。

【論点②】副知事定数条例との関係

副知事の定数は、地方自治法第161条第2項の規定により、条例で定数を定めなければなりません。

そこで、佐賀県には「副知事定数条例」というものが置かれており、そこにはこう書かれています。

佐賀県副知事定数条例
地方自治法(昭和22年法律第67号)第161条第2項の規定により、副知事の定数は、2人以内とする。

で、今、佐賀県の副知事はどうなっているかというと、2024年3月現在において

  • 落合裕二副知事
  • 南里隆副知事

の2名が就任しており、条例定数の上限まで副知事が選ばれている状況です。

なので、仮に島耕作副知事が地方自治法の副知事だというのであれば、この副知事定数条例にも引っかかってしまいます

なので、この点においても、島耕作副知事が地方自治法に定める副知事でないことは明らかでしょう。

【まとめ】島耕作副知事は地方自治法違反ではない!

以上、本日は、佐賀県において「島耕作副知事」が議会から指摘を受けた件について、本当に島耕作副知事が地方自治法違反にあたるのかどうか、2つの論点から考察してみました。

その結果、「副知事の職務」の視点からも「副知事定数条例」の視点からも、島耕作副知事は地方自治法に定める副知事には当たらず、よって選任において議会の議決も必要ない、という結論を導き出すことができそうです。

ただ、普通に考えて「マンガのキャラクターに地方自治法の人事的な規定が及ぶわけないだろ」ということは、誰でも分かりそうなもの。

佐賀県の政局について、私はここでは言及しませんが、指摘した議員が、本当に心の底から「地方自治法違反」と思っているのかどうかは、現時点では分かりません。

ただ、そもそも「島耕作副知事」は、プロモーションの一環で始まった取組だとのこと。

そういった意味において、これだけ話題が集まった「島耕作副知事」は、思っていた形とは違うかもしれませんが、結果としてプロモーションには成功した…というふうに言えるのかもしれませんね。

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