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令和6年度地方財政対策、みどころを徹底解説!

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【この記事で分かること】

  • そもそも地方財政対策とは何なのか
  • 総務省が示した令和6年度地方財政対策のみどころ
  • こども・子育て関係の地方財政措置の要点

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

令和6年度の国家予算案が閣議決定されたこととあわせて、総務省は令和6年度地方財政対策を公表しました。

地方財政対策は、地方自治体にとって、地方交付税をはじめ、さまざまな「国と地方の予算の関係」を見ていく上で、非常に重要な役割を果たすものです。

一方で、この地方財政対策、ぱっと見ただけではなかなかその内容を紐解くことは難しいですし、その解説も、年明けにiJAMPとか、地方財務協会の月刊「地方財政」に解説記事が載る程度で、一般向けのメディアで詳細に解説が語られることは、ほとんどありません

そこで本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、誰でも見られるこのウェブメディアを使って、令和6年度地方財政対策のみどころについて、お話ししようと思います!

そもそも地方財政対策とは

国は、予算編成に際して、

  • 地方に負担を求める事業
  • 地方の財源確保策である地方交付税

などについて、国と地方で整合性をとりながら作業を進めていく必要があります。

たとえば、生活保護費であれば、国が3/4の国庫負担部分を、地方向け負担金として予算計上すれば、地方財政では、それを歳入として受けるとともに、残り1/4を歳出として計上しなければなりません。

こういった、

国事業の地方負担部分のほか、地方単独事業として必要な経費を、地方全体の歳出として計上するとともに、その歳出に見合う財源を、地方税や地方交付税、地方債などで賄えるように計画立てたものが、地方財政計画

です。

地方財政計画は、地方交付税法に基づいて、国が策定して、国会に提出するとともに、一般に公表しなければなりません。

地方交付税法(抄)

(歳入歳出総額の見込額の提出及び公表の義務)
第七条 内閣は、毎年度左に掲げる事項を記載した翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類を作成し、これを国会に提出するとともに、一般に公表しなければならない。
一 地方団体の歳入総額の見込額及び左の各号に掲げるその内訳
イ 各税目ごとの課税標準額、税率、調定見込額及び徴収見込額
ロ 使用料及び手数料
ハ 起債額
ニ 国庫支出金
ホ 雑収入
二 地方団体の歳出総額の見込額及び左の各号に掲げるその内訳
イ 歳出の種類ごとの総額及び前年度に対する増減額
ロ 国庫支出金に基く経費の総額
ハ 地方債の利子及び元金償還金

この地方財政計画は、例年1月末ごろに公表されるのですが、一方で国の予算が閣議決定されるタイミングで、国が予算計上する地方交付税の額を決定するための、いわばバックデータ的に、地方財政計画の主要な部分と概算額が、一般に公表されます。

これが「地方財政対策」と呼ばれるもので、総務省自治財政局の年末の大仕事になります。

とはいえ、地方財政計画と地方財政対策とで何が違うかというと、

  • 数値の精度
  • 数値の細かい内訳

程度しか差がありませんので、地方自治体で財政や企画の仕事をしている限りにおいては、基本的に、地方財政計画の完成品を待たずとも、この「地方財政対策」でほぼ主要な情報は網羅されていると言えるでしょう。

令和6年度地方財政対策のみどころ

さて、そんな令和6年度地方財政対策のみどころ、私・まゆが、いくつかご紹介させていただきます。

【みどころ①】交付団体ベースの一般財源総額が増加⇒各自治体の一財総額も増傾向

まず、令和6年度地方財政対策で示された、交付団体ベースの一般財源総額については、

62兆7,180億円(前年度比+5,545億円、+0.9%

とされています。

交付団体ベースの一般財源総額とは「地方税+地方譲与税+地方交付税+臨時財政対策債」のこと。

令和6年度の普通交付税は、基準財政需要額・基準財政収入額ともに、地方財政計画で示された数値をめがけて算定が設計されます。

従って、

個別団体の特段の事情さえなければ、歳入の根幹を占め、かつその使途に裁量の余地がある一般財源総額は、前年度から一定の増加が見込まれる

ということが言えます。

人事院勧告に伴う給与改定を反映した人件費の増や、物価上昇がさまざまな歳出予算に跳ねており、予算編成に苦慮している自治体が多いと思いますが、そんな中にあって、一般財源総額が増加傾向にあるというのは、この時期の財政課にとっては朗報だと言えるでしょう。

まゆ
まゆ
ただし、法人関係税がマクロの動きと違う自治体や、基準財政需要額の事業費補正・公債費算定額の減少が予定されている自治体は、一般財源総額が地財対策のとおりに伸びないこともありますので、お気を付けくださいね!

【みどころ②】定額減税は地財対策の中で補てん

今回の地方財政対策における論点となっていた、定額減税への対応

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地方財政的な目で見ると、

  • 所得税の減税⇒地方交付税法定率分の減
  • 個人住民税の減税⇒地方財政計画上の地方税収の減

という形で、大きな影響が見込まれていたわけですが、

定率減税への対応
  • 所得税の減税に伴う地方交付税法定率分の減(約7,600億円)
    ⇒国税の税収増で対応
  • 個人住民税の減収(約9,200億円)
    ⇒地方特例交付金で対応

といった形で、地方の財源に手を突っ込まれることなく補てんがなされることとなり、自治体の予算編成における影響は、一定クリアされたことが確認されました。

このあたり、財務省との地財折衝はかなり厳しいものになったのではないかと思うのですが、結果的に地方にとってはかなり良い結果になったと言えるでしょう。

もっとも、この後、自治体は定額減税の恩恵が及ばない低所得者向けの給付であるとか、課税と非課税の端境にいる人々への対応などといった形で、実務面で大きな負担が想定されるところ。

このあたりの詳細はまだ明らかにされていませんが、おそらくかなりの事務負荷がかかることが予想されます。

一難去って、また一難ですね…。

【みどころ③】「18歳未満人口」で算定する需要額が登場!

今回の地方財政対策では、国が「こども未来戦略」を策定し、少子化対策や子育て支援に取り組んでいる姿勢を踏まえた内容が掲載されています。

それが、「こども・子育て政策に係る地方単独事業(ソフト)の推進等」です。

この取組は、ポイントが2点あります。

  1. 自治体が、独自のこども・子育て政策(ソフト)を実施できるよう、地方財政計画の一般行政経費(単独)を1,000億円増額
  2. 普通交付税の算定において、こども関係の基準財政需要額の算定をより的確なものとするため、新たな算定費目「こども子育て費(仮称)」を創設

このうち、①については、個別自治体の予算編成・財政運営にただちに影響があるような話ではないのですが、②は非常に重要です。

というのも、R6普通交付税において、「こども子育て費(仮称)」という新たな基準財政需要額の費目が創設され、しかもその測定単位に「18歳未満人口」を使うことが明らかにされているから。

「こども子育て費(仮称)」は、これまで社会福祉費や衛生費(市町村分では「保健衛生費」)、その他の教育費で算定されていたこども関係の需要額を、この費目に集約統合し、しかも、その算定の測定単位に「18歳未満人口」を使うとのこと。

これにより、こどもの人口が多いところに、こども関係需要額の算定が手厚くなされるようになりますので、特に都市部の自治体においては、財源措置が手厚く感じられるようになることでしょう。

たかし
たかし
一方で、郡部の少子高齢化が進んでいる団体の中には、基準財政需要額を剥がされるように感じるところもあるかもしれません。
まゆ
まゆ
全国市長会がどういう反応をするかが気になりますね…。

【みどころ④】どう使う?こども・子育て支援事業債(仮称)

こども・子育て支援関係の充実は、ソフト面のみならず、ハード面にも及んでいます。

R6地方財政対策では、こども・子育て支援機能強化に係る施設整備や子育て関連施設の環境改善(ハード)を速やかに実施できるよう、地財計画への関連歳出の計上と合わせて、新たな地方債「こども・子育て支援事業債(仮称)」を創設する旨がうたわれています。

その概要は…

1.対象事業
地方単独事業(こども基本法に基づく都道府県・市町村こども計画に位置付け)として実施する以下の事業
(1)こども・子育て支援機能強化に係る施設整備
(2)子育て関連施設の環境改善

2.地方財政措置
充当率:90%
交付税措置率:50%(機能強化を伴う改修)又は30%(新築・増築)

3.事業期間
令和10年度までの5年間 (「こども・子育て支援加速化プラン」の実施期間)

4.事業費
500億円

といった内容です。

これまでだと、充当率75%で交付税措置のなかった一般単独事業債などで対応せざるを得なかった子ども関係施設について、この地方債を使えば後年度の公債費に交付税措置をつけながら整備を進めることができます。

ただ、総額500億円というのは、オールジャパンで使うにはいかにもロットが小さいように思えますが、大丈夫なのか、一抹の不安はあります…。

なお、この地方債を活用するためには、どうやら対象事業を「こども基本法に基づく都道府県・市町村こども計画に位置付け」る必要がありそうです。

この地方債を積極活用するためには、こども関係部局と財政課とがうまく連携して、予算を付けたい事業をこども計画に位置づけていく作業が必要になってきますね。

まゆ
まゆ
逆に、子ども部局は、この地方債をうまく使えば、ハード事業の予算を財政課に認めさせることができるかもしれません。
実額算入される公債費の交付税措置は、基準財政需要額が純増なので、ミクロの財政運営的には結構大きいんですよね。
たかし
たかし
まゆ
まゆ
もちろん、マクロでは総額が変わらず、配分が変わるだけなのは分かった上で言ってますよ!

まとめ

以上、本日は、令和6年度地方財政対策について、その全体像を見るとともに、いくつかの「みどころ」についてお話しいたしました。

令和6年度の地方財政対策は、定額減税、少子化対応、物価高への対応など、非常に論点が多く、総務省自治財政局の皆さんは、かなり調整に苦労されたかと思いますが、その結果、地方団体の立場からしてみると、全体的にかなり良いものになったと言えるかと思います。

マクロでの財源確保はもちろんのこと、こども・子育て関係では地方交付税や地方債でかなり踏み込んだ措置がとられており、これらをどう自らの予算に反映するか…自治体財政課にとっても腕の見せ所です。

なお、年末に示される「地方財政対策」は、あくまで速報版のようなものであり、今後、総務省から詳細が詰められたより具体的な情報が、たとえば1月下旬の都道府県財政課長会議などで示される場合があります。

追加情報や新たな考察などがありましたら、適宜当ブログでも反映していきますので、ぜひそちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

それでは各自治体の財政課の皆さん、予算編成作業もいよいよ後半戦。あと少し、頑張っていきましょう

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