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【能登半島地震】経営難のコミュニティFM、必要?災害時は役に立つ?

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【この記事で分かること】

  • コミュニティFM放送局とはそもそも何なのか
  • 災害時におけるコミュニティFM放送局の役割は何か
  • コミュニティFM放送局の課題・問題点は何か
  • 能登半島地震でコミュニティFM放送局はどのような役割を果たせるか

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

令和6年能登半島地震で多くの被害が出ておりますが、こういった災害時に役立つ情報伝達ツールとして、コミュニティFM放送の話題がしばしば上ります。

一方で、多くのコミュニティFM放送局が、経営難などを理由に近年閉局しているのも事実。

今回の能登半島地震を踏まえて、改めてコミュニティFM放送局は必要なのか、災害時のラジオ情報は必要なのか…。

本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、災害対応中の今、改めてコミュニティFM放送局の必要性について、考えてみようと思います!

コミュニティFM放送局とは

まず、そもそもコミュニティFM放送局とは何なのか、ご説明します。

コミュニティ放送局は、市区町村内の一部の地域において、地域に密着した情報を提供するため、平成4年1月に制度化された超短波放送局(FM放送局)です。

コミュニティFM放送局は、地域の文化、イベント、ニュース、地域の関心事に焦点を当てたプログラムを提供することが一般的です。

コミュニティFM放送局の目的は、地域社会を結びつけ、地域住民の声を反映し、地元の情報を提供することです。このような局は、商業的な利益を追求することではなく、地域コミュニティの利益や発展を支援することを重視しています。

運営主体は、地元メディアの系列会社などの民間企業や、地元自治体主導で設立された第三セクターが担うのが一般的。運営には、少人数の社員・職員とともに、一般的ボランティアや地域の住民がパーソナリティ、DJ、ニュースキャスターとして参加し、地域の出来事や関心事に焦点を当てた番組を制作・放送しています。

また、コミュニティFM放送局は、地域内での文化交流や地域コミュニティの課題に関する議論の場を提供することもあります。地元の音楽やアーティストのサポート、地域のイベントの宣伝、地域団体や非営利団体の活動の支援など、地域社会の発展や結束を促進する役割も果たしています。

コミュニティFM放送局は、地域社会に密着した情報やエンターテインメントを提供することで、地域住民のコミュニケーションや交流を促進し、地域全体の結束を強化する重要なメディアとして位置付けられています。

また、放送法の定めのとおり、災害時には地域に密着した災害情報の発信をすることも、コミュニティFM放送局の重要な役割です。

放送法(抄)

(災害の場合の放送)
第百八条 基幹放送事業者は、国内基幹放送等を行うに当たり、暴風、豪雨、洪水、地震、大規模な火事その他による災害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、その発生を予防し、又はその被害を軽減するために役立つ放送をするようにしなければならない。

こうした役割を担うため、コミュニティFM放送局と自治体とが災害放送に関する協定を結んでいることが一般的です。

コミュニティFM放送局の意義

さて、そんなコミュニティFM放送局の意義は、どこにあるのでしょうか。

地域密着メディアとしての役割

コミュニティFM放送局は、放送法が定める基幹放送事業者の中で、もっとも放送エリアが狭い…逆に言うと、地域住民に近いところで運営できるメディアです。

ですので、大手メディアの情報発信ではなかなか載ってこないような、ローカルならではの、地域密着で、きめ細かい情報を伝えることができるようになります。

  • 近所のどこの公園で桜がみどころか…
  • 地域で、どんな住民団体が、どのようなイベントを行っているのか…
  • 市町村が、住民向けにどんなサービスを行っているのか…

こういった、きめ細かい情報を、その地域に住む住民パーソナリティが、魂をこめて伝えることができる…

これこそが、地域密着メディアである、コミュニティFM放送局ならではの特徴だと言えるでしょう。

住民が出演できるメディアとしての役割

また、コミュニティFM放送局は、地域密着メディアですので、地域住民であれば、出演も比較的しやすいのが大きな特徴です。

テレビ…特にキー局の全国ネット放送のほか、大手ラジオなどに出演することは、芸能人であっても困難なほど、そのハードルは高いものですが…

一方で、コミュニティFM放送局は、地域密着メディアですので、地域で活躍する住民であれば、出演の機会も比較的多くあります。

コミュニティFM放送局といえども、そこは立派なラジオ局ですので、規模こそ違えども、その設備のクオリティは大手ラジオ局と同等。

そんなラジオ局に出演し、「自分もラジオに出た!」と言えるようになることは、地域住民にとって、とても誇らしいことになるでしょう。

災害情報メディアとしての役割

コミュニティFM放送局は、災害情報メディアとして非常に重要な役割を果たします。

たとえば、災害が発生した場合、コミュニティFM放送局は、地域のラジオリスナーに対して、即座に情報を提供します。

また、その情報も、コミュニティFM放送局は地元の特性や地域のニーズに精通しているため、商業放送局や全国ネットワークよりも地域に特化した情報を提供することができ、たとえば地域の避難場所や地域での支援活動、被災者支援の方法など、より具体的な情報を提供することができます。

加えて、地域密着メディアとしての特性がありますので、地域のボランティアや支援団体といった、地元ならではの団体や個人を連携させ、支援活動を調整・促進するための情報を提供することができます。

また、コミュニティFM放送局は、地元市町村と災害協定を結んでいることが多く、そこに集まる情報は、公的な、非常に質の高いものとなっているのも、大きな特徴です。少なくとも、SNSのようにデマやフェイクニュースが混じることはなく、非常に安心の置けるメディアであることは、間違いありません。

このほか、ラジオは乾電池で聞ける、というのも、災害時における大きなメリットです。スマートフォンの場合、バッテリーが切れたあとの充電をどうするかという問題がつきまといますが、入手が容易な乾電池であれば、情報入手手段が途絶えにくくなるのです。

このように、コミュニティFM放送局は災害発生時において、地域住民に対して必要な情報を提供することで、地域の安全と支援体制の構築に貢献しています。

コミュニティFM放送局の問題点

一方で、コミュニティFM放送局には、いくつかの問題点があります。

そもそもほとんど聞かれていない

ここまで、コミュニティFM放送局の意義や役割について、力を入れて語ってきましたが…そもそも、このコミュニティFM、一般にはほとんど聞かれていないのが実情です。

ラジオの聴取率については、テレビの視聴率のような明確な統計データはないのですが、それでも肌感覚として、周りに

ねえねえ、コミュニティFM聞いてる?

と聞いても、よほどの関係者出ない限り、ほとんどの場合は「No」という答えが返ってきてしまうのが実情。

そもそも、これだけYouTubeや各種SNSで、自分の好きな情報を好きなときに見ることができる時代、多くの人は、ラジオを聞くという習慣すら失っています

どんなに有意義な情報、地域密着の情報であっても、聞いてくれる人がいなければ意味がありません

放送エリアが狭く、カーラジオとして使いにくい

このように、そもそもラジオが聞かれにくいという昨今の状況ではありますが、そんな中、ラジオが一定の役割を発揮できる場所があります。

それが、車の中

とりわけ、職業ドライバーさんの中には、車の中でラジオを聞くというのが習慣になっている方も多く、ラジオCMも主にドライバーさんをターゲットにしたものが多くなっています。

しかしながら、車は高速に遠方まで移動することができる交通手段でありますので、簡単に遠くまで行けるわけですが、そうなるとコミュニティFM放送局の放送エリアを越えた移動が行われることも多くなります。

タクシーであれば近距離移動もおおいかもしれませんが、たとえばトラックドライバーさんなんかは広域的な移動が多いので、コミュニティFM放送を聞くことは、ほとんどできません。

コミュニティFM放送は、ラジオがその存在感を発揮できる車での聴取に適さない

これは、結構大きな問題であると感じます。

自治体依存の財務体質

このように、コミュニティFM放送局は、「聞かれていない」という実情があり、それが広く一般の認識にもなっていますので、メディアを経営する上での財源となる広告収入を確保することが、非常に厳しい状況になっています。

その代わりに、コミュニティFM放送局の財務面を支えているのが、自治体からの委託料

たとえ出資しているとはいえ、株式会社で運営されていることが多いコミュニティFM放送局に運営補助金を支出することは難しいものがありますので、その代わりに活用されている手法が、「行政広報番組の放送を委託する」というスキーム。

地元自治体が、行政広報番組を制作し、ラジオ放送することをコミュニティFM放送局へ委託。通常、コミュニティFM放送は1自治体1つなので、特命随意契約の理屈も十分に成り立ち、コミュニティFM放送局に業務を発注することが可能となるのです。

ただし、自治体の側も、財政難に陥ったり、新たな政策に必要となる財源を確保する必要があったりするなどの理由で、この「行政広報番組の放送委託」を廃止する傾向がありますが、こうなるとコミュニティFM放送局は一気に経営が傾きます。

実際、この「行政広報番組の放送委託を廃止・減額」が理由で閉局に追い込まれたコミュニティFM放送局が、最近でも、

  • エフエムひらかた(大阪府枚方市、令和4年2月終了)
  • エフエムもりぐち(大阪府守口市・門真市、令和5年3月終了)
  • エフエムあまがさき(兵庫県尼崎市、令和5年3月終了)※後継団体が業務継承
  • FMちゃお(大阪府八尾市、令和6年3月終了予定)

といったように続出しており、この流れは止まらないものと考えられます。

まゆ
まゆ
それにしても、コミュニティFM放送局の廃止、近畿圏に集中してますね…
課題意識があった中、「よそがやるなら、じゃあうちも」となった可能性が高そうですね。
たかし
たかし
まゆ
まゆ
近畿圏は、日本維新の会系の首長や議員が多く、良くも悪くも「身を切る改革」が進みやすい雰囲気もありそうですね。

災害時にコミュニティFM放送局は機能するのか?

このように、コミュニティFMの置かれた環境は、はっきり言って非常に厳しいです。

ましてや、多くの自治体が今後の少子高齢化に対応すべく、予算のやりくりに苦労している中、「ほとんど誰も聞いてない」コミュニティFM放送局に多額の予算を支出することは、なかなか住民の理解は得られないでしょう。

一方で、今回、能登半島地震が起こったことにより、「災害時のコミュニティFM放送局の役割」に期せずして注目が集まっています。

災害情報の発信に取り組む「ラジオななお」

今回、被災地にもっとも近いところにあるコミュニティFM放送局が、「ラジオななお」。

ラジオななおは、石川県七尾市、鹿島郡中能登町全域、ならびに羽咋市、羽咋郡志賀町、鳳珠郡穴水町・能登町の各一部地域を放送区域とするコミュニティFM放送局で、北國新聞社が筆頭出資者となる株式会社が運営しています。

このラジオななお、1月1日の能登半島地震で、放送局自身も大きな被害を受けました。

このような中、地域密着メディアならではの、「今、被災者が必要としている、きめ細かい情報」の発信に取り組んでいます。

一方で…災害時に聞かれなかった「エフエムひらかた」

一方で、「災害時に役に立つ」という触れ込みのコミュニティFM放送局でありながら、「実際には災害時にも聞かれなかった」と総括した放送局があります。

それが、閉局した「エフエムひらかた」です。

大阪府枚方市は、エフエムひらかたの閉局にあたり、その経緯・経過を、ホームページでこまかく公表しています。

大阪府では、平成30年度に大阪北部地震が発生し、さまざまな被害が出ているのですが、この大阪府枚方市では、そのときに災害関連情報をラジオで取得した人について調べたところ…

  • エフエムひらかたによる災害時の情報発信の必要性を認めた人は、67.4%
  • にもかかわらず、大阪北部地震発災時に、実際にエフエムひらかたで地震に関連する情報を聞いた人は、わずか3.9%
  • 一方で、市公式ホームページのアクセス数は、発災時には7倍に増加
  • スマホを持たない高齢者の方は、主にテレビや口コミで情報を入手

という結果が出ています。

つまり、

コミュニティFM放送は、災害時であっても、その効果がほとんどない

ということを大阪府枚方市は示しており、これもエフエムひらかたの閉局に影響を及ぼしています。

なお、「エフエムひらかたを聞いていた人が3.9%しかいなかった」ということは、逆に言うと「3.9%はいた」ということを同時に意味しています。

とはいえ、3.9%のために、平常時から多額の委託料を支払い続けることは自治体運営の視点からは妥当ではなく、それより3.9%の人々については、コミュニティFM放送とは違う形で災害情報を届ける方が妥当だ、という政策判断は、大いにあり得るところでしょう。

まゆ
まゆ
スマホと比較したラジオのメリットである「乾電池駆動」も、電池駆動のモバイルバッテリーがあれば解決できるんですよね。

まとめ

以上、本日は、能登半島地震も踏まえつつ、災害時の情報伝達ツールとしての視点も持ちながら、コミュニティFM放送局についてお話しいたしました。

コミュニティFM放送局は、地域密着のメディアとして、また災害時の貴重な情報伝達ツールとして、平成4年の制度開始以降、全国各地で親しまれてきました。

一方で、スマートフォンの普及などによって、人々の情報入手手段が多様化し、「ラジオを聴く」という習慣が人々から消えつつある中、経営が苦しいコミュニティFM放送局を、自治体が一般財源を投じてまで維持すべきかどうかについては、議論が必要な時期がきており、実際、近畿圏では多くのコミュニティFM放送局が閉局の判断をしています。

一方で、災害時の情報伝達手段としての必要性についても議論が必要になり、現に能登半島地震では地元のコミュニティFM放送局が全力で災害情報発信に取り組んでいます。

しかし、大阪北部地震の被災経験がある大阪府枚方市では、災害情報の伝達にあまり効果がなかったことを、直近の実感として持っているのも、また事実。

このように、コミュニティFM放送局については、その存在意義が本格的に問われている状況にあります…

が、一方で、今、現に起こっている能登半島地震で、コミュニティFM放送局が情報発信に必死で取り組んでおり、それが今この瞬間に、たとえ人数が少なくとも、誰か被災者の耳に届いているのも、これまた事実です。

今は、役所の内部管理的な視点でコミュニティFMの必要性を議論する時期ではないのかもしれませんが…

今回の能登半島地震の教訓、次に日本のどこかで起こる災害に活かすためにも、今回、被災地でコミュニティFM放送がどのように活躍し、どのような役割を果たしたのか…注目しておきたいと思います。

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