まゆの地方自治情報局
地方自治に興味がある人のために
行政

指定都市市長会「少額随意契約の見直し要請」って何?なぜ要望?

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

【この記事で分かること】

  • 指定都市市長会の「少額随意契約の見直し要請」の概要
  • なぜ指定都市市長会は少額随意契約の見直しを求めるのか
  • 指定都市以外には同様の問題はないのか

皆さん、こんにちは!まゆの地方自治情報局(@mayumist_lg)です!

指定都市市長会が、「少額随意契約の予定価格」について要望をとりまとめたことが、地方自治界隈で、にわかに話題になっています。

指定都市市長会という大きな団体がとりまとめるにしては、随分と実務的で細かな要望。

でも一方で、このことが、実は地方自治体にとって、結構な足かせになっている…

本日は、国と地方の両方で公務員を経験し、現在は地方自治体向けのコンサル業務にかかわる私・まゆが、今回の指定都市市長会の「少額随意契約に関する要望」について、解説しようと思います!

指定都市市長会の令和5年度要請

全国に20ある政令指定都市の市長が集まって構成されている、指定都市市長会

全国市長会のような法的根拠のある団体ではありませんが、横浜市や大阪市、名古屋市といった大都市の市長が集まって、見解を一にして行う要望には、かなりの重みがあり、国においても指定都市市長会の要望は、非常に重く受け止められています。

そんな指定都市市長会は、令和5年11月20日に会議を行い、いくつかの「要請」をとりまとめました。

その中に入っているのが、今回取り上げる、

少額随意契約の予定価格に関する指定都市市長会要請

です。

「少額随意契約の予定価格に関する要請」とは

この「少額随意契約の予定価格に関する指定都市市長会要請」は、次のような要望書の体裁をとっています。

※指定都市市長会ホームページ(https://www.siteitosi.jp/conference/conference/post_31.html)より

この要望のポイントを挙げると…

  1. 地方自治法施行令で定められている少額随意契約の上限額が、昭和57年度の改正以降改正されていない
  2. これでは昨今の物価上昇はおろか、消費税の引き上げすら反映されておらず、実態に合っていない
  3. 本件は、国の「地方分権に関する提案募集」でも提案されているが、放置されている
  4. 少額随意契約の見直しを行うと、自治体は迅速かつ能率的に業務を執行できるようになり、事業者側の負担も軽減され、地域経済の活性化にも寄与する

といったところです。

少額随意契約の上限額とは

今回、指定都市市長会の要請で取り上げられている「少額随意契約の上限額」については、地方自治法施行令第172条第1項第1号において、

(随意契約)
第百六十七条の二 地方自治法第二百三十四条第二項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
一 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。

とされており、その「別表第5」は、以下の表のとおりです。

一 工事又は製造の請負
都道府県及び指定都市
二百五十万円
市町村(指定都市を除く。以下この表において同じ。)
百三十万円
二 財産の買入れ
都道府県及び指定都市
百六十万円
市町村
八十万円
三 物件の借入れ
都道府県及び指定都市
八十万円
市町村
四十万円
四 財産の売払い
都道府県及び指定都市
五十万円
市町村
三十万円
五 物件の貸付け
三十万円
六 前各号に掲げるもの以外のもの
都道府県及び指定都市
百万円
市町村
五十万円

この金額が、昭和57年以降、全く見直されていないことについて、指定都市市長会は強い不満を訴えています。

この間、物価上昇はもとより、消費税が創設され、その税率も3%⇒5%⇒8%⇒10%と、累次に渡る税率引き上げまでもがあったにもかかわらず、この金額の置き換えが行われていない…。

地方公共団体の契約は、これまた地方自治法により、一般競争入札が原則となっていますが、その入札には手間と時間が必要となるため、機動的な事務執行のためには、少額随意契約の活用が現場レベルでは必須となっています。

地方自治法が入札を原則としている趣旨は最大限尊重した上で、せめて金額の上限について、物価上昇分くらいは反映してよ…

というのが、指定都市市長会の要請の意図だと思われます。

かなり実務的な要望ではありますが、一方で、こういった実務的な要望にも目配せができるあたりが、図体の大きい全国市長会ではできない、20市のみで構成されている指定都市市長会ならではの強みだと思います。

少額随意契約には別の論点も…「市町村」が広すぎる問題

ところで、今回、指定都市市長会が要請として取り上げたことで、この「少額随意契約の上限金額問題」が一躍脚光を浴びましたが、この項目には、実は別の論点もあります。

それは…

「市町村」の範囲が広すぎる問題

です。

ここに言う「市町村」は、指定都市は除かれているわけですが…

一方で中核市で一番人口が多い、人口約62万人の千葉県船橋市と、人口100人台の小規模な町村とで、同じ上限が適用されてしまっています。

ちなみに、指定都市で一番人口が少ない静岡市の人口は、約69万人です。

どこかで線を引かないといけないという事情は分かるにせよ、さすがに静岡市と船橋市は人口規模だけで見ればほぼ同規模

指定都市と中核市は、行政権能では大きな差がありますが、一方で随意契約が認められる金額の妥当性に、行政権能と因果関係があるとは言えません

そもそも、昭和57年当時は、仙台市や千葉市ですら政令指定都市ですらなかった時代です。

指定都市の範囲が当時よりも広がる中、今回の少額随意契約の要件を「都道府県・指定都市」と「それ以外の市町村」という分け方にする妥当性も、今回、合わせて議論の余地があるのではないでしょうか。

まとめ

以上、本日は、指定都市市長会の少額随意契約の予定価格に関する要望についてお話しいたしました。

指定都市市長会は、昭和57年以降、全く改正がなされていない少額随意契約の上限額について、物価上昇等を踏まえて、根拠法令となっている地方自治法施行令を見直すよう、要請の中で求めています。

物価上昇が続いている中、どういう理由でこの金額を昭和57年以降据え置いているのは、なかなか説明が難しいところではありますが、もし説明が難しいというのであれば、さっさと今日的な妥当性を求めて、政令を変えてしまえば良いだけの話。

また、今回の件で、あわせて「都道府県・指定都市」と「その他の市町村」という区分の分け方に疑義がある点にも、合わせてスポットライトが当たる形となりました。

昭和57年よりも「指定都市」の範囲が広がり、中核市に近いような規模の都市も指定都市になっている中、逆に指定都市に近いような規模を持つ中核市が、ごく小さな町村と同じ扱いを受けていることにも、やはり違和感がぬぐえません。

これらの話の根底には、総務省自治行政局が、地方自治法施行令の細部について、細かなメンテナンスを怠っていた面は否めないと思います。

「今さら触るなんて理屈がない…」という話もありそうですが、だからといって現状を漫然と放置していい理由にはなりません。

総務省自治行政局には、ぜひ今回の指定都市市長会の要請、真摯に受け止めていただきたいと思います。

こちらの記事もおすすめ